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氷点 / 三浦 綾子
ネタバレします。 色々思う事はありますが、 全体的に、身につまされる。 「原罪」がテーマになっているそうです。 それぞれが罪を背負い生きて行く様は 人は生まれながらに罪を背負っており 完璧に無垢な人間なんて存在しないという事が 淡々と伝わってきます。 また、無垢に生まれても 成長するつれて魂は汚れ、 皆何らかの罪を背負って生きて行くという事も身につまされました。 登場人物達が置かれる状況については そう誰もが経験するようなものではありませんが、 渦中の人間達の葛藤やふるまいについては 現代の私達の日常とそう変わらないものを感じます。 特に終盤の夏枝は、陽子に対してライバル心を剥き出しに 若い男性を相手に色目を使うあたりは 何とも気持ち悪いと思いましたが 夏枝にとって陽子が我が子を殺された恨みの対象である以上 陽子が幸せを掴むことが許せないんだろうなあ、と思うと その行為に至るまでの気持ちについては同情でき悲しくもありました。 傍から見ると、滑稽で虚しい行為なのに、本人は自分に陶酔しているんですね。 なんだか悲しい事です。 同時に、美しかった夏枝が年老いていき、 成長してきた陽子の若さに負ける事が耐えられないという点にも 人間誰しも老いていくという摂理を すんなりと受け入れられない葛藤は 誰しも一度は経験するのかもしれません。 いつまでも美しく、皆の注目や感心を自分のものしていおきたい 女の浅ましい部分を体現しているのがこの夏枝なんだな、と思いました。 また、啓造についても、 最初に妻の背徳を疑ったが最後、 いつまでもその呪縛から逃れられない辛さは分かる気がします。 恨むしかない、でも恨めば恨む程自分も苦しくなる。 一度疑い出すと切りがない。 無限地獄に陥る辛さを体現しているのがこの啓造だと思いました。 逆に言えば、「信じるものは救われる」。 信じない限り、啓造が救われることは無いのかも知れません。 そして、自分が無垢であれば、自分が正しければと 自分がピュアである事を信じて強く生きて来た陽子が、 自分の生まれを知った時の挫折っぷりは共感できました。 汚れた自分、屈折した自分が許せないので 自らの手で自らを罰し、この世から排除しようとする気持ち。 純粋で真っ直ぐな程、ポッキリと折れやすいとでも言いましょうか。 一度の過ちを受け入れられないんでしょうね。 皆誰しも「汚れ」や「罪」を抱えながら生きている現実を受け入れられないが為に 陽子が守って来た「自分」も壊れてしまった。 色々な伏線が回収されていない事が気になりましたが どうやら続編が出ているようですので そちらを読んでみようとおもいます。 夫婦とは、親子とは、母性とは 人間関係の根幹の部分について 深く考えさせられる作品でした。 また、それほど宗教色が強くなかったのも良かったです。
by kei-_-happy
| 2011-06-22 17:20
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