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2011年8月22日(月)
平日です。 本来ならお仕事ですが、 私もあっくんも有休を取りました。 昨日まで松本へサイトウキネン「兵士の物語」 http://keitama.exblog.jp/16756938/ を観に行って来た疲れを取る為.... というよりは、本当の目的は こまつ座「父と暮らせば」を観劇する為です。 というわけで、まずは新宿へ。 マチネですので、少し早めにお昼ご飯を食べることにしました。 新宿の天ぷら屋さん「つな八」で天ぷら定食。 2,000円程しますが、 揚げたてサクサクの天ぷら美味しかったです! お腹いっぱいになった後、少し新宿の街をぶらぶらして 途中スタバでコーヒー飲んで、 新宿サザンシアターへ。 新宿高島屋の南側の別館7Fにあります。 おお、満員なのですね!! ぱちぱち!! この「父と暮らせば」は、今年初めて知った作品です。 今年3月に石丸幹二さんが こまつ座の「日本人のへそ」にご出演なさったのをキッカケに 井上ひさしさんの戯曲や作品に興味を持つようになりまして.... この「父と暮らせば」が素晴らしく良いという話を、 役者さんのトークやら何やらでちょいちょい聞いていたので、 今回ぜひ観てみたいと、とても楽しみにしていました。 さらに....実は、「日本人のへそ」に出演されていた 辻萬長(つじかずなが)さんがとっても素敵だったので ちょっぴりファンになってしまいましたw さすがの円熟した芝居、何よりもお茶目な感じや渋い声と風貌がすごく好きです。 ニッポンの古き良きオヤジ像にピッタリくる!と勝手に考えていますw なのでこのお芝居で辻さんが演じる「おとったん(お父さん)」 すんごく楽しみにしていました。 さて、いよいよ始まるよ! -------------------------------------- 「父と暮せば」 作 :井上 ひさし 演出:鵜山 仁 出演:辻 萬長、 栗田 桃子 あらすじ: 原爆投下から三年後の広島。 市立図書館で働きながら一人静かに暮らす美津江の胸の中には、 ほのかな恋心が芽生え始めていた。 そんな美津江の目の前に、突然として父竹造があらわれる。 自分の恋心を必死に押さえつけようとする美津江に、 竹造は全身全霊、懸命なエールを送るのだが......。 (こまつ座さんのHPより) -------------------------------------- 以下、感想です。 まず一言。 何という名作.... こういう切り口で「ヒロシマ」「原子爆弾」について 書かれた作品を観るのは初めてだったので ものすごく斬新、かつ、上手いなあ....と 今更ながらに井上ひさし先生の筆の力に感服します。 戦争から3年後が舞台であり、 戦争当時そのものを描いているわけではありません。 生き残った被爆者にスポットが当てられています。 父娘の対話をベースに回想を交え、 原子爆弾が投下された日の悲惨な有様、 いかに恐ろしいものが投下されたのか、 客観的に主観的に、様々な視点を交えて 原子爆弾が広島に暮らす人々の命をどのようにして奪い、 助かった人々の人生にどのような爪痕を残したのか を描きだしています。 「戦争がもたらしたもの」とは何か、 同じ人間同士が戦い、その結果もたらすものについて 短時間にググっと深いところまで引き込まれ、考えさせられます。 また、若干のどんでん返しも含まれており、 それを知った後の感動はまた一際では無いでしょうか。 娘の苦しみ、葛藤と父への強い想い、父の深い愛情が この設定で見事に表されていると思いました。 また、その他、娘が図書館で働いている事や 恋心を抱いた相手の事など、細かい伏線?的な設定も ちゃんと回収されるというか、意味が与えられています。 無駄な部分が削ぎ落とされ、かつ大切な事が ビシバシ伝わって来る名作だと思いました。 ここから完全にネタバレします。 未読、未見の方は絶対にご覧にならない方が良いです。 予備知識無しでご覧になった方が良いです。 勿体ないです!!w 余談ですが、私はこのお芝居を観ようとチケットを取った後、 なんとなんと、 まさかのNHKにネタバレされましたw 井上ひさし先生の追悼番組の中でこの戯曲が紹介され、 ナレーションで一言アッサリネタバレされて(怒 やめてよおおおおおおおお!! それすごい大事なポイントじゃんかあああああ!!! 未見の人だっているんだぞおおおおおお!!! お陰で、ネタバレの感動が半減!!!! かーーーなり本気でNHKを恨んでいますw よっぽど投書でもしようかと思いましたw と、いうわけで、未見の方はご覧にならないで下さいね。 絶対損しますからw ここでご退場下さいませ〜 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ では。 そうは書きましたが、 予備知識無しで一緒に観劇したあっくんも、 結構早い段階でこの設定は分かって感動したそうです。 まあ実際、暗に示している台詞が結構あって、 少しずつその設定が明らかになっていき、途中で決定的な一言が出て来ます。 だからこそ、「そうなのか!」って分かると結構ハッとすると同時に この作品の深さを知ることになるのですよ。 つまり、 父を救えず、一人生き残ってしまった自分を責め続けている娘、 そんな娘を心配して出て来た父の亡霊 二人の魂の対話の物語だったのでした。 私は望まなかったけれど NHKさんによって予めその知識を入れられていましたので、 舞台を観ている途中からずーっと泣きっぱなし....。 観劇で、感極まって嗚咽しそうな程の号泣は 初めてだったかも知れません。 おとったん(お父さん)の ひょうきんでおちゃめな雰囲気のお陰で、ところどころ笑いもあり 舞台そのものは結構明るい雰囲気で進んでいきます。 だからこそ、終盤、父と娘の生死の別れの場面が あまりにも残酷で、涙が止まりませんでした。 建物の下敷きになった父、 近づく炎を前にどうすることもできない娘に 「最後の親孝行だと思ってはよう逃げろ」 と告げる父。 父を見捨てることができず、炎に巻かれそうになる娘。 父は、幼い頃からしてきたようにじゃんけんで決めよう、と提案し、 「俺はグーを出す」と告げ娘を勝たせようとする.... なんとも悲しい別れの場面。 「このようなむごい別れが 何万とあった」 この台詞が今更ながら胸を打ちました。 有名な「はだしのゲン」でも、 同様に建物の下敷きとなった家族を救い出すことができず 炎に焼かれてしまうエピソードがありましたので 実際にこういう悲しい別れがたくさんあったんだろうな、 という事は何となく知っていました。 しかしこうして迫真の演技で目の前に繰り広げられ、 「一つのむごい別れ」をありありと目撃した私は、 一度に何十万人もの命を奪ったあの爆弾とは なんと残酷な、なんと悲しい兵器なのか、と心底考えさせられました。 こんな事が二度とあってはいけない。 当たり前に言われている事ですが、 このお芝居を観劇した事によって、 より深い実感を持ってこの言葉を口に出来ます。 この戯曲の素晴らしいところはたくさんありますが、 最後は前向きな明るい光を浴びつつ舞台が終わるところも素敵だなと思いました。 そもそも、娘が恋心を胸に抱くことがきっかけとなり 父が現れることとなります。 本当に父の亡霊だとしたら、それは娘を心配する父の愛情そのものであり、 捉え方によれば、父の亡霊は、娘が自分の生を見つめようとする際に どうしても越えなければいけない心の葛藤が具現化したものでもあります。 父との対話を通じて娘は救いの言葉を貰い、 自分の恋心を素直に受け入れます。 父に「もうしばらく会えないかもしれないね」と告げる娘の言葉は、 これからの人生を一人で歩いて行く決意の現れなんでしょうね。 泣きはらした顔に満面の晴れやかな笑顔を浮かべ、 そこに輝くような夕日が当たり、幕が降ります。 まるで、激しい夕立が上がり 晴れ間から美しい夕日が現れるような清々しさを感じました。 戦争がもたらしたもの....失ったものはもちろん、 生き残った者が背負っていくものの重さ、 傷の深さ、それでも生きて行く為の葛藤も 救いと共にありありと描かれています。 役者さんについての感想ですが、 お二人とも上手で上手で、もう何て言ったらいいか.... これはぜひたくさんの方に観て頂きたい。 たった二人のお芝居なのですが、 ぐいぐい引き付けられて、全く飽きる事が無いです。 シンプルだからこそお二人の芝居によるところが大きいと思うのですが ここまで心を鷲掴みにされたことはなかなか無いです。 つまり凄い凄い!!と言いたいのですw 辻さんのひょうきんでお茶目な「おとったん(お父さん)」は 予想通りとっても素敵でした。 娘役の栗田さんもすごく素敵でした。 実は、舞台を映画化したものがありまして、 舞台を観た後、そちらも観てみました。 父と暮せば 通常版 [DVD] 台詞もお芝居も、舞台と全く一緒です。 娘を宮沢りえ、父親を原田芳雄、 さらに、舞台では名前だけで実際には登場しない 娘の想い人役を浅野忠信が演じています。 原爆が投下された瞬間のCGが所々入っていて、 舞台よりも視覚的に訴えて来る内容になっています。 こちらもなかなか良かったです。 泣きました。 ....が、 全体的には、やっぱり舞台の方がテンポや迫力、お笑いの部分のメリハリも含め 勝っていたと思いました。 特に終盤、父と娘の生死の別れのシーンあたりの畳み掛けるお芝居については 舞台の方が迫ってくるものがありました。 舞台のセットや演出がシンプルな分、 父と娘のお芝居でお客さんの心をグイグイ掴んで行く感じ。 これこそ舞台の醍醐味だなあ、と感心しました。 まだ原作である戯曲は読んでいないのですが、 近々読んでみようと思います。 父と暮せば (新潮文庫) 義務教育を卒業して以降、 だんだんと戦争について学ぶ機会が減った大人にこそ、 ぜひ観て欲しい作品だと思いました。 また、小説も映画も素敵ですが、 これはぜひ舞台を観劇して欲しいです。 残念ながら今年の東京公演は終わってしまいましたが、 また来年やってくれるのかな? 私も、また観劇できる機会があったら ぜひぜひ観たいと思います。
by kei-_-happy
| 2011-08-22 22:50
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